毎日がpikkujoulu

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真夜中の虹(アキ・カウリスマキ) 

アキ・カウリスマキ監督の「真夜中の虹」(原題:Ariel.1988)、1990年日本公開のこの映画、どこで最初に観たのだっけ?渋谷の映画館だったか、レンタルビデオだったか、何も覚えていない。「マッチ工場の少女」(1991年)は公開時に銀座の映画館で観た。

 

1988年、私はフィンランドにいた。その頃撮られていた映画なのだ。 

初めて観た時は、主人公たちがものすごくおじさんだった印象があったが、最近見直してみると、若いではないか!あれから30年以上も月日は流れ、、、。

しかし、今観ても面白い。もしかしたら、今だから余計に面白さが分かるのかも。

 

「真夜中の虹」とはなんて素敵なタイトルだろう。原題の「Ariel」は、映画の最後に夜明けの海に浮かんだボートに乗った主人公たちが、フィンランドからメキシコに逃亡するために乗り込む船の名前だ。バッグに流れる曲は「Over the rainbowフィンランド語バージョン。

 

フィンランド北方の炭鉱の町で暮らしていたカスリネンは炭鉱の閉鎖により失業し、自殺した父親の形見のキャデラックに乗って、南を目指し旅に出る、というロードムービー。登場人物みんな正直でちょっとぶっ飛んでいて魅力的。

 

この映画の中で、恋人の女性と彼女の息子と浜辺でピクニックをするシーンがある。波打ち際の石がごろごろしたところに、レジャーシート敷いて、ラジオを聴きながら3人寝転がっているのだが、カスリネンは足が水に入っているし、彼女は海の方に頭向けて寝ているから、波がきたら頭からずぶ濡れだ。息子はマイペースに漫画読んだりコーラ?飲んだりしているんだが、見ているこちらが心配になってくる。が、本人達は至って普通に楽しんでいる?んだよね。これってすごくフィンランドっぽいと思うのですが、、、いい意味で。

 

カウリスマキの映画は、淡々としている。物語が単調なわけではない。事件は立て続けに起こり、生きることに不器用な主人公は失業したり、お金を盗まれたり、殺されそうになったり、記憶をなくしたり、親友が亡くなったり、人生は悲惨な方向へと転がっていく。出てくる料理はあまり美味しそうじゃないし、いつも寒そうだ。セリフも少ない。でも恋人や友達と出会うこともある。真っ暗ではないのだ。不思議と底が明るいから、どこか希望が残る。悲しいがおかしい。

 

同監督の労働者3部作(初期3部作)と言われる「パラダイスの夕暮れ」「真夜中の虹」「マッチ工場の少女」に続く第4作目の映画が12月に公開されるという。

タイトルは「枯れ葉」

非常に楽しみである。